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「ただいま戻りました」
居間の状態は朝と変わっていなかった。ただ見ているテレビが変わっていただけだ。時間はもう11時過ぎになっていた。
「おかえりー。チェーンソー買ってきてくれた?」
買ってきた格安のチェーンソーを義文の目の前に置く。
「おっ、どれどれ……」
白いビニール袋の中に手を入れチェーンソーを外に出そうとしかけ、
「これは……FILAX99-8じゃないか! ドイツ製の高級チェーンソーの…。あまりの切れ味の為、生産が途中で中止になったやつ。産みの親の職人曰く、この世にFILAXで切れないものは無いとか。これなら俺と親父の縁を……」
「即刻お返ししてきます」
「冗談だよ。それより何でこんなものが? どこにあったの?」
義文の目が輝いている。ここまでイキイキしている息子は見たことがない。そう言えば義文は工具マニアだった。
「これは私がとあるルートで手に入れました。(近くのスーパー)苦労しましたぞ。(一瞬で決めた)だから大切に扱って下さいよ。」
「ありがとう親父! 今度俺にもそのルートを教えてくれよ」
さすがにここまで興奮している息子に今更本当のことを言えるはずもなく、
「機会があればですよ」
満面の笑みで、「頼む!」
とお願いしてきた。
そんな重圧感から解放されるべく、家を出た。
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