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食堂で席を取り、自分はAランチを食べた。上司は愛妻弁当だ。弁当箱を開けた彼が一瞬だけ変な顔をしたが、その時は気にもならなかった。
それを口にしながら、上司が口に出したのは彼が入社した頃の話。
どれだけ優秀だったかを語る気だろうか。そんな話なら今すぐ耳栓をしたい。
だが、実際は…
「お前よりも、もっと怒られてたんだぞ」
それは驚いてしまうくらいの失敗談の数々で、苛めに近いくらい叱られたと話す。それが自分ならすぐにでも辞めてしまいそうだ。
上司は語る。
「たくさん叱られた分、叱る側に回った時に相手の気持ちが良く解るんだ。でも甘やかしたらダメになる。………難しいんだよな」
と、弁当箱のミニトマトを爪楊枝で刺して、こっちの皿に乗せて言った。
「だからお前も、いつか解るさ。辞めずに頑張れよ」
「………はい」
きっと良い返事を出来たと思う。そして、皿に乗せられたミニトマトは上司の弁当箱に返した。
コレ嫌いなんだよなぁ…と小さく呟いた声には聞こえない振りをして…。
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