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信号が黄色になった。
いける。
少しアクセルを踏んで相手の姿を完全に消した。
バックミラーで確認してもアイツはいない。
あとは自分の独走だ。
お気に入りのCDに入れ換えてアクセルペダルをより深く踏んだ。―と、バックミラーに何かが写った。視界に入る赤いランプと耳に入る停止の指示…。
一瞬にして地獄に堕ちた気分だった。
道路わきに車を停めれば、二人の警察官が笑顔で現れて後ろの車へ連れていかれる。
そんな自分の横を通り過ぎるあの車。一瞬だけ運転手と目が合った。
相手は勝ち誇ったようにこっちに笑顔を向けていて、睨み返してやろうと思った時にはもう車ははるか遠くで…。
警察官の「なんでスピードを出したんだい?」と言う定番の質問には、何一つ答えられる言葉が見つからなかった。
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