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GC53年9月
アフリカ大陸制圧作戦前線基地
「アムステルダムが落ちてもう半年か…」
砂埃が舞う基地の外で、二人の地球連合軍兵士が休憩していた。一人は金髪で髪を肩まで伸ばし、左頬に傷を持つ男…リュング・フィリップス曹長。もう一人は眼鏡に短髪のインテリっぽい男…グレイブ・ガルファス曹長である。
「もうそんなにたったんだな」
タバコに火をつけながら、リュングがグレイブの呟きに答える。
「俺らも敵さんも、同じ日に基地を一つ潰されて、休戦協定を疑いだした。んで、中東での小競り合い…。まぁ、ありゃ俺らがふっかけたんだろうが、何か…きな臭いよな」
タバコを蒸しながらリュングが言う。グレイブが空を見上げながら続く。
「宇宙じゃ、アースクリフが奴さんに奪われたみたいだ。これで、頭の上は敵に抑えられたことになる」
「だから、地上だけはこっちのもんにしとこうってのが今回の作戦なんだろ?」
タバコを地面で踏み消しながらリュングが言った。
「実際俺達は命令に従うだけだからな。そんな戦略的な話はお上に任せとけばいい。それよりも気になるのが、俺達の部隊が再編されるってことだ」
「あ?そうなのか?」
「お前…今朝辞令が届いてただろう?」
グレイブが呆れたと言わんばかりに深いため息をつく。
「そうだったっけ?…てことは、お前との腐れ縁も今日で終わりってことか!」
「残念だったな、リュング。あいにく、再編っていっても隊長が別の隊に行くだけらしい」
「けっ、またお前と一緒の隊かよ。…まぁ、あの隊長とおさらばできるならなんでもいいけど」
リュングは肩を落としたと思いきや、すぐに顔を明るくする。
「お前は誰が上官になっても折り合いが悪いだろうよ。…っと、もう休憩も終わりか」
「えぇー!もう少しサボろうぜぇ!」
リュングが駄々っ子のように座り込む。
「まったく…今からその再編についてのミーティングだろう。新しい隊長やら隊員やらのお披露目会だぞ?初っ端から印象悪くする気か?」
グレイブが眼鏡をあげながら言った。リュングが渋々立ち上がる。
「しゃあねぇな。新隊長さんのケツでも拝みに行くか…」
リュング達は、ブリーフィングルームへと揃って歩き出した。
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