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「千鶴、行ってくるね。」
そんな声が、おぼろげに聞こえてきた。
「あぁ、行ってらっしゃい。」
寝ぼけ眼で、晃を見送った。
晃は、カメラマン。
ゆくゆくは、独立したいと言っている。
だけど、世の中そんなに甘くない。
早く、そんな夢を捨てて、千鶴と一緒に生きていく道を選んで欲しかった。
だけど、夢を持った男を、繋ぎとめておくことの難しさを、千鶴は知っていた。
いつものように、お化粧をして家を出る。
毎日何の刺激もない、かと言って、安らぎもない、孤独を抱えて生きる。
いつも、一人になってしまうんじゃないかって、不安が頭を過ぎる。
年を取るごとに、千鶴は孤独で胸が押しつぶされそうになる。
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