駆け引きはいらない

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家に戻ると、翼は千鶴を抱きしめた。 そして、激しくキスをした。 「千鶴、思った事をきちんと話そう。心に秘めたままじゃ、千鶴が辛いだろ。」 翼は、千鶴をソファーに座らせて、千鶴を見つめた。 「思った事、全部言って欲しい。」 その真剣な眼差しの前で、嘘は通用しない。 「これを言ってしまったら、私、きっと翼に嫌われる・・・」 「言ってよ。」 「嫌、嫌われたくない・・・」 千鶴は、翼から目を逸らした。 翼は、千鶴の手をしっかりと握り締めて、千鶴に言った。 「俺が年下だから、頼りないの?」 翼の言葉に、千鶴は首を振った。 「だったら、話してよ。千鶴さ、初めの頃は、寂しいとか、翼が好きだとか、言ってくれたけど、最近は、寂しいも、好きも言ってくれなくなったよね。 時間が経つにつれて、千鶴がどんどん他人行儀になっていく。 それって、俺が頼りないからでしょ?」 「違うよ・・・それは翼のせいじゃない・・・私のせいなの・・・」 千鶴は、翼にこの心のうちを全部話して、理解してもらえる自信はなかった。 「全部、思ってること話して。俺、最近、遊びに行く事多かったし、千鶴には、悪いと思ってた。」 「ううん、翼は何も悪くないよ。私が抱えている問題だから。全然気にしなくていいよ。」 「気にするよ!そうやって、黙ったまま、距離を置かれるのは、俺は嫌だよ!」 (距離・・・) 確かに、千鶴は翼を愛しはじめてから、翼に嫌われまいと、何も言わなくなっていた。 大好きや、愛していると言う言葉が、一層現実味を増した時、その言葉を口にしなくなった。 きっと、気持ちが重くなればなるほど、それは言ってはいけないような気がしていたからだ。
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