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「話してよ。お願いだから。」
千鶴は、少し悩んでいた。
だけど、このまま嘘をついても、翼は千鶴の心を見抜いてしまう。
「私の話を聞いても、私を好きでいてくれる?」
先に、約束をしておかなければ、安心は出来ない。
「千鶴は、そんなに自分に自信がないの?
俺は、そんなに千鶴に信頼されてない?
俺の事、愛してるなら全部話して。」
「わかった・・・」
千鶴は、恐る恐る言葉を選んで話をした。
「翼の事、信じてないわけじゃないけど、本当は信じられない。
いつか、捨てられるのは、わかっているの。
だから、私は・・・翼に我が儘は言いたくない・・・
来週、お見合いをします・・・
それは、私が結婚したいから・・・
翼を待っていても、いつか捨てられると思うから・・・だから、捨てられる前に、新しい人を、」
そう言いかけた時、翼が千鶴を抱きしめた。
「ごめん・・・千鶴、ごめんね。確かに千鶴が言うように、今すぐには結婚もできないし、千鶴を安心させてやる事は出来ない。
だけど、千鶴の事を愛している事は信じて欲しい。
だけど、俺が信じられないのは、仕方ないよな・・・
俺はまだ未成年で、千鶴の思うようにしてあげる事も出来ないんだから・・・」
千鶴を抱きしめる翼の手が、震えていた。
「お見合いしてきていいよ。いい奴見つかったら、結婚していいから。それまで、俺と一緒に居て欲しい。
駆け引きはいらない。俺は千鶴を愛しているから。」
翼の言葉に、千鶴は涙が溢れた。
自分の孤独を埋めるために、他人は犠牲にしていいと思った、自分の虚しさが悲しかった。
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