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どう頑張っても、翼は、今すぐ千鶴と結婚するのは、難しい事はわかっていた。
だから、せめて千鶴の好きなようにさせてやりたいと思った。
でも、お見合いの日が来て、千鶴が綺麗にお化粧をすると、胸が痛んだ。
今、千鶴を失う事は、自分の身を切り裂くように痛かった。
人を愛するという事に、年齢など関係ない。
だけど、人を幸せにするのには、やっぱり人生経験が必要なのだ。
兄の晃から、彼女を奪って、千鶴を幸せにしようと、頑張ってきたけど、結局、自分の人生経験の前に立ちはだかる壁を、ぶち破ることは出来なかった。
「それじゃ、行ってくるね。」
千鶴がそう言って、出ようとした時、翼は千鶴を引き寄せて抱きしめた。
「がんばってこいよ。」
そう言いながら、翼の体の震えを感じた。
「やっぱり、いかない・・・」
千鶴はやっぱり、翼を愛している。
このまま、翼を傷つけてまで、お見合いをするべきじゃないと思った。
「だけど、俺は千鶴と今すぐに結婚してやれないんだぞ。」
千鶴の瞳から、次々と涙の粒が溢れ出す。
「翼を、愛している・・・いずれ、捨てられてもいい・・・やっぱり、翼じゃなきゃだめなの・・・」
千鶴は翼の胸の中に飛び込んだ。
「捨てるわけないだろ!俺は、千鶴を愛してるから。俺は、千鶴がいないと、だめなんだよ!」
そう言って、千鶴を強く抱きしめた。
それから二人は、愛し合う。
何度も、何度も愛し合う。
ベッドで抱き会った後、携帯電話を見ると、真奈美からの不在着信があった。
千鶴は、真奈美に急いで電話をして、謝った。
しばらくは許してもらえなかったが、真奈美に本当の事を話した。
今、苦しんでいる全ての事、翼との事を全部話した。
真奈美は全部は理解できなくても、初めて本当の事を打ち明けてくれた千鶴を、許してくれた。
それでも、やっぱり一人になる不安は消えなかったが、翼の気持ちが痛い程わかった。
私たちに、駆け引きなど必要ない。
今は、翼を全力で愛して行こう。
年下の翼に、そんな大事な事を教わった気がした。
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