157人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は、晃も申し訳なく思ったのか、久しぶりに千鶴を抱いた。
晃の大きな手に包まれると、孤独を忘れてしまう。
でも、その手が離れてしまうと、たちまち孤独を感じる。
肌と肌が触れ合う時だけ、なんだか正常な精神状態を保てた。
病んでいる。
千鶴は、言葉に言い表せない、自分の闇が病的に思えてならなかった。
そして、晃の弟が東京へ上京する日がやって来た。
「弟は、翼って言うんだけど、電話番号はこれね。」
そう言って、一枚のメモを渡された。
「それ、登録しておいて。それから、千鶴が仕事終わる時間に合わせて来るらしいから、何時か教えて?伝えておくよ。」
晃は出張の用意をしながら、用件だけを言う。
こっちの主張なんて、きっと聞いてくれないんだろう。
千鶴はそう思いながらも、晃に素直に仕事の終わる時間を告げた。
「じゃ、夜20時ね。」
そう言うと、千鶴にキスをして、
「いってきます。」
と言った。
これから3週間、晃のいない状態で、翼と過ごす事が苦痛でならなかった。
それに、晃のいない生活が3週間も続くのが、正直怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!