晃の弟

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その日は、晃も申し訳なく思ったのか、久しぶりに千鶴を抱いた。 晃の大きな手に包まれると、孤独を忘れてしまう。 でも、その手が離れてしまうと、たちまち孤独を感じる。 肌と肌が触れ合う時だけ、なんだか正常な精神状態を保てた。 病んでいる。 千鶴は、言葉に言い表せない、自分の闇が病的に思えてならなかった。 そして、晃の弟が東京へ上京する日がやって来た。 「弟は、翼って言うんだけど、電話番号はこれね。」 そう言って、一枚のメモを渡された。 「それ、登録しておいて。それから、千鶴が仕事終わる時間に合わせて来るらしいから、何時か教えて?伝えておくよ。」 晃は出張の用意をしながら、用件だけを言う。 こっちの主張なんて、きっと聞いてくれないんだろう。 千鶴はそう思いながらも、晃に素直に仕事の終わる時間を告げた。 「じゃ、夜20時ね。」 そう言うと、千鶴にキスをして、 「いってきます。」 と言った。 これから3週間、晃のいない状態で、翼と過ごす事が苦痛でならなかった。 それに、晃のいない生活が3週間も続くのが、正直怖かった。
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