8人が本棚に入れています
本棚に追加
20**年 11月13日 金曜日 AM・0:47
秋の風が大きく聳え立つ木々を揺すり、庭に咲いている金木犀の香りが町全体に広がって行く。
と、静かな住宅街の一軒の家から1人の男が出てきた。
黒い帽子を深く被り、ボロボロのジャンパーにジーンズ、何処と無くギラついた目付き。どう見ても、この家の住人ではなさそうだ。
それもそのはず。
男の手には、剥き出しの札束と、真っ赤な血で染まった包丁が握られていたのだから。
「…ったく…馬鹿な奴等だなぁ…大人しくしてりゃあ殺されずに済んだのによぉ」
ククッと小さく笑うと、男は札束をジャンパーのポケットに突っ込み、していた手袋で包丁についた血を拭った。
そして、はめていた手袋で包丁をくるむと、その家の近くに停めてあった白い車へと向かい、トランクを開ける。慣れた手付きでビニール袋に包丁と手袋をいれ、満足気にニッと笑う。
「さぁて…今日はまだ時間がありそうだ。もう一軒行くとするか」
込み上げてくる狂喜を抑えながら、男は運転席のドアを開けて乗り込みアクセルを踏んだ。
住宅街を抜け、夜中だからか人通りが全くない大通りへと出る。と、信号が赤になった。男は舌打ちをし、ブレーキを踏む。
その時だった。
何か、視線を感じた。
否、視線というより…
・・
殺気。
最初のコメントを投稿しよう!