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「君、ボンヤリしてないで早くならんで。」
急に後ろから声を掛けられたのでビックリして一歩後ろに引く。
すると体の重心が変な方向に行ったのか足が地面から浮き倒れそうになった。
「わ、危ねぇ」
その人はよろけた僕の体を腕を掴んで支えてくれた。
掴まれた腕は少々痛かったけど、転ぶよりかはましなので助かった。
「すいません。」
ボケッとしてたところを注意され、さらに助けてもらってたんじゃしょうがない。
その人の方をむいて謝罪をする。
ついでにお礼もしようと顔をあげるとそれが自分のよく知った人であることに気付き、頬を緩めた。
「なんだ、オニオンか。」
その安堵の声を聞いて、鬼男もニヤリと笑った。
「妹彦が全然こっちに気づかないからさ、脅かせてやろうと思って。」
悪そびれた様子もなく、悪戯の成功した子供のように笑う鬼男につられて僕も自然と笑顔になる。
「でも、急いだ方がいいのは本当みたいだから行こっか。」
周りに殆ど生徒がいなくなっていることに気付き、僕たちは急いで体育館に向かった。
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