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鬼男君が転生したことが運命ならば、俺がこの場所に降りて、2人がこうして出会うこともまた、運命だ。
しかしそれは、なんて残酷な運命なんだろう。
俺にとっても、鬼男君にとってもこれはマイナスにしかならない。
だから、会うつもりはなかった。
それが無理だと言うことも、分かっていたけど。
「閻魔先輩!」
後ろから声を掛けられた。
声だけで何となく誰だか分かる。
この声を聞かなかったことにして、逃げてしまえたらどんなにいいだろう。
会者定離…、出会いには別れが付き物だから。俺は出会いを望まない。
きっと俺達は悲惨な別れかたしかできないから。
しかし懐かしい、その声に自然と頬が緩む。
何回も聞いた、最近では忘れかけていた、その優しい声。
振り返れば思った通りの人物がそこにいて、こちらに駆け寄ってくる。
銀色かかった髪と赤みの強い肌の色に金色の瞳が転生前の彼と重なる。
だけど明らかに違うこと。
それはその瞳に尊敬の念を秘めさせていること。
彼は彼であって彼ではないんだ。
当たり前の話なのに俺はそれに少しがっかりして、それの100倍喜んだ。
「どうしたの?」
何故か心のスッキリした俺は、鬼男君に心から笑いかける。
鬼男君は少し照れたように下を向き、顔を赤らめた。
よくみれば耳まで真っ赤だ。
鬼男君にこんな一面もあるんだ。
もともと赤い顔をさらに赤く染めて、彼は顔を上げた。
そして、なにかの覚悟を決めたかのように鋭い目付きになった。
一呼吸置いて、彼は口を開いた。
「俺も、生徒会入りたいんですけど。」
彼は照れながらも、しっかりとした声で言った。
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