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『おめでとう。これで君は自由の身だ。』
どうしてこんな時にでも、この人は笑っていられるのだろう。
自分がいなくなることで少しでもこの人を傷付けてしまうと思っていたのはただの自惚れだったのだろうか。
それならば、どんなに悲しいことだろう。
『お別れの時間だよ。』
下を見れば、沢山の魂がひしめき合い、我先に我先にと転生を急かしているのが見える。
その光景はいつかみた、地獄から天国へと昇ろうとする囚人達の姿と、重なってみえた。
この中に、自分も仲間入りするのか・・・
だが、輪廻が回ってきてしまった以上、もうどうしようもない。
それにココにはもう、僕のこころを引き留める物なんて無いのだから。
悲しんでくれると思っていた上司は、後ろで嬉しそうに笑っている。
もう、逝くしかないのだ。
そう自分に言い聞かせて、その穴へ飛び込んだ。
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