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世の中の殆どの人々は、男同士の恋なんて気持ち悪いと思うだろう。
俺も、少し前まではそう思っていたから、その気持ちは分かる。
しかし、俺は恋をした。
それも男に、だ。
自分自身、同性が恋愛対象になるなんて死んでもないと思っていた。
だか、してしまったのだ、男相手に恋を。
同性愛に悩んでいることを知らないあいつは、無邪気な笑顔を周りに振り撒いている。
やめてくれ。
俺だけを見てくれ。
恥ずかしい事に仲間という同性にも、恋の処為(せい)で嫉妬してしまう。
恋とは末恐ろしいものだなと、ふと思うと同時に、目の前にいる俺の片思い相手を見た。
目が合った。
それを逸らす事も出来ずに、見つめ合う。体感時間では何分も過ぎた感覚になるのに、実際の時間では十秒も経っていないのだろう。
そうこうしているうちに、そいつは俺がぼうっとしている事に気付き、近付いてきた。
「大丈夫か?佐久間。さっきかららしくないぞ」
「いや、なんでもない。平気だ」
「そうか、無理はするなよ」
「言われなくとも分かっている」
しまった、つんけんした態度をしてしまったと思った時にはもう遅く、そいつは何かあったら直ぐに言えよ、と一言残して自分の持ち場に返ってしまった。
…いや、ちょっとまて。
あいつは何て言った?
さっきから、俺の事を見ていた、のか?
自覚して言ったのか、いや、あいつの事だ、無自覚だろう。
しかし、嬉しいのには代わりなく、顔が赤くなった事を皆にばれないように片手で覆った。
―――Jealousy?―
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