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ハッと目を見開けば。
眩しいくらいの光が溢れて。
真っ白な世界が飛び込んでくる。
「大丈夫……?」
心配そうに俺の顔を覗き込んできたのは、見覚えのある保健の先生。
一瞬、どこかわからずに戸惑ったものの、その顔を見て徐々に記憶がはっきりと蘇ってくる。
あぁ。そうだ。
俺、保健室で寝てたんだ……
意識がはっきりしてしまえば、馬鹿みたいな夢。
怯えまくってた自分が情けねぇ。
「すみません。大丈夫です。
最後の日になって、お邪魔しちゃってすみませんでした」
愛想笑いを浮かべながら、保健の先生に挨拶して立ち上がる。
「ううん。謝ることじゃないのよ。
でも、本当に大丈夫? やっぱりお家の方に連絡しましょうか?」
心配そうに覗きこんでくる先生。
いや。ウザいんですけど。
つーか、親に連絡なんて冗談じゃない。
「いえ。少し寝不足だっただけですから。もうすっかり良くなりました」
さらに余裕のありそうな笑顔を作ってみる。
寝る場所をくれたことには感謝してるけど、それ以上のことは全く望んでませんから。
余計なお節介される前に逃げたほうがいいな……
そう判断した俺は素早く「ありがとうございました」と「大丈夫です」を繰り返しながら、保健室から抜け出した。
中学生活最後の日。
出来れば静かに何事もなく消え去ってしまいたかった。
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