Graduation from the dark

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月岡めぐみはクラスメートではあるものの、過去会話を交わした記憶はほぼ皆無だった。 可もなく不可もなく目立たない容姿をしている彼女は、性格も大人しくて、はっきり言えば暗い印象を持ってしまうような女子だ。 確か仲のいい女子とはクラスが分かれてしまって、何度かクラスの女どもからハブられてるのを見たことがある。 まぁ俺も人のこと言えるほど仲いいヤツがクラスに居るわけでもなかったんだけど。 そんな月岡から、「大丈夫?」なんて聞かれると思ってはなかったが、卒業式の後に保健室行きなんて馬鹿やった自分の印象がクラスメートにどう映ってるか理解した俺は「あぁ。ありがと」と短く答えた。 別にそれだけの会話で終わって帰ることもできたはずなのに。 「月岡は? こんな時間まで何やってたの?」 つい、そう聞き返してしまったのは、どうしてなんだろう。 「えっ?!」 月岡が驚いたように一瞬顔をあげて、慌ててまた下を向く。 いや。聞いた俺もびっくりしてるから。 「えっと……」と、再びくちもごりながら月岡が答えた返事によると、彼女は友人たちと卒アルの最後のページにある寄せ書きを書きあって、その後先生たちにも書き込みを頼みに行ってきてたらしい。 が、彼女のキャラでは後から後からくる他の生徒達に横入りされては後ろに下がっていってしまい、友人たちもついには先に帰ってしまったらしい。 その光景、怖いくれぇ想像できるんだけど。 「そこまでして、書いてほしいもん?」 つい素直な感想を告げてしまった。 でも、本当にそんな立派な教師がいる学校でもないし。 とはいえ、こんな時間まで待って書き込み集めてきた月岡に言う台詞じゃなかったな……と思いつつも、今更否定することもできず。 少し困ったような月岡の顔を見ながら、どうしていいか分からなくなった俺は、つい「ちょっと見せてみろよ」と口走ってしまう。 いや。別に興味ねぇんだけど。 やっぱ俺、今日おかしいんだ。ぜってー風邪ひいたな。 再び自分に言い訳しつつ、またも「えっ?! あっ?!」と慌てる月岡を見つめる。 慌ててはみても、結局卒アルを差し出してくるあたりが月岡らしい。 寝込んでた俺は、まだ1ページも見ていない卒アルの一番最後のページに目を落とした。  
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