夢の時間へ

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胡桃が頬を膨らませても頼人は全く動じない。 いちいち小言を言うからテンションを上げさせようと喋ったのに、結局イライラするのは自分だけなのだ。 いつもの事だから仕方ないと胡桃は諦める。 「まあまあ二人とも。 せっかく行くのだから楽しまなくては。」 二人の席の後ろからひょっこり現れるおじさん。 「立川警部が誘わなかったら、俺はここにいませんからね。」 「広い視野を見ることは大切だよ。 探偵に必要な力が加わるだろう。」 頼人は苦笑いした。 必要な力はそんな事で手に入るわけがない…… 誰もこの50代近くのおじさんを警察の人間だとは思わないだろう。 端から見ると高校生カップルに見える男女と流行遅れのようなよれよれのジャケットを着た警部。説明を始めたい。 高橋胡桃は警察関係者である父の背中を見てきたせいか、正義感が強く、曲がった事は嫌いな性格だ。彼女の夢は作家だった。小説が好きな胡桃は、いつか作家になって「人を殺める事の悲惨さ」を世間に分からせたいという野望がある。若々しい心意気である。
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