夢の時間へ

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立川は余裕の表情でパンフレットを見ていた。 そこには今バスで向かっている『緑ヶ丘スケートリンク』について書かれてある。いつも事件の手助けをしてくれる二人に感謝の気持ちを込めてと、立川がリンク使用フリーパスというものをプレゼントしたのだ。 妻と子供にプレゼントするつもりが、有効期限が切れるこの時に温泉旅行へ行ってしまったため、頼人と胡桃に渡ったというのは内緒である。 フィギュアスケートをやった事はないが、試合やアイスショーのテレビ放送を欠かさず録画して見ている胡桃は即効で承諾した。 実は密かに観戦したいという願望を持っているのだが、何せチケットが高額なため、高校生が買うには親にねだるかアルバイトでお金を溜めるかどちらかになる。 彼女は雑誌のあるページをめくって顔をにんまりとさせた。 『四回転成功 次世代エース 大田拓実(オオタ タクミ)』 「お前は大田選手が好きだよな。俺は西沢派だけど。」 「西沢(ニシザワ)さんだって素敵なスケーターだよ。 でも私は大田君が好きなの。 あの確実に跳ぶジャンプと他の選手にはない高速で回るスピン、まるで踊っているようなステップ……いつ見てもカッコいい。」 「……お前がここまでスケートファンだったとは思いもしなかったよ。」
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