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フィギュアスケートといえば秋からシーズン、試合が始まるわけだが、春や夏にはアイスショーもやっている。愛知や東京、大阪など大都市で行われているのだが、胡桃は愛知公演のアイスショーのチケット販売についての新聞をじっと読んでいたのである。
そこで頼人は彼女の趣味を一つ知ったのだ。
彼もスケートというスポーツに全く興味が無いわけではない。テレビで見る番組が無かった時にはフィギュアスケートの試合を見る事があるため、選手の名前や特徴はある程度覚えている。
「私にとってはフィギュアスケートといえば女性のイメージだったからね。外国の選手のスタイルも良いし日本には妖精と呼ばれた美央(ミオ)ちゃんもいるし。」
「立川警部、変なこと考えてません?」
「そ、そんなつもりはないぞ。」
頼人の言葉に全力否定した立川に二人は笑った。
事件が関わらなければ三人は家族のような親戚のような、そんな柔らかい関係になるのである。頼人にとっては海外出張でいない父親代わりの存在であり、胡桃にとっては始めてこの町に来た時から優しくしてくれたおじさんである。
そして、フィギュアスケートといえば女子、という日本のイメージは静かに覆されようとしている。
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