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死ぬまでの時間は有限だ。
人は、その時間を大切にしたいと願う傍ら、面倒な出来事に遭遇すると、『早く過ぎないだろうか』と願ったりもする。
接続詞を異様に多用する冗長な挨拶を聞かされている時間や、苦手な人物と二人きりになってしまった気まずい時間。
眠れなくなってしまった遠足前夜。
見たい番組が始まるまでの30分。
終わりそうで終わらない授業の残り、二三分。
などなど、過ぎて欲しい時間は様々だ。人によってもまた異なってくるに違いない。
しかし、それらが過ぎた時間だけ、死に近づくと自覚している者は、一体どれくらいいるのだろう。
少なくとも、私は死ぬまで自覚していなかった。
どうせまだ人生長いのだし、と高を括っていた部分もある。死んでしまえば、生きていた時間などあっという間だというのに。
過去しか認識できない私たちは、後悔することしかできないのだけれど、それでも、現在できることを一つでも多く経験しておけば、未来に後悔する可能性は減らせるのではないか――。
などと考えているポジティブな幽霊がいたら、一度対談してみたいものである。
人生で一度くらいは幽霊を見てみたいと思うのだけど、今のところ、その願いが叶う気配はない。
常日頃から見えるのは怖いので、本当に一度だけ。『いる』という事実を確認できれば満足なのだが……。
「ふぉっふぉっふぉっ。メリークリスマス!」
サンタが靴下に入れておいてくれることも、多分ないだろう。
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