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儚く笑う子だと、きっとそうだと、初めて会った時は思っていた。
親しくなってみれば、彼女は強くしなやかな女子だった。
これが本当に、その他大勢と同じ高校2年生なのか、と何度も思うくらいに大人で。
そんな彼女の隣はとても居心地がよかった。
クラスには居場所がなかったけれど、休み時間には図書室で、彼女と過ごした。
かといって何か話すわけでもなく、ただ近くの席に座って黙々と本を読むだけ。
それでも、彼女の傍は落ち着いて、それだけで十分だった。
いつしか俺たちは、休日も用があれば一緒にでかけるようになっていた。
付き合っていたわけではない。
あの頃、俺は彼女に好意を寄せていたかもしれない。
彼女も、俺に同じ想いを抱いていてくれたかもしれない。
ただ、お互いに、傍に居られれば十分だったから、気持ちは伝えなかった。
ただ、お互いが、大事な存在であることは確かなものだった。
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