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小高いなんて誰が言ったか。
小高いどころじゃない、と毒づく。
漸く坂道を登りきった俺は、すぐ傍の木の幹に手をついた。
息苦しい。
体力の衰えがはっきりしすぎて、まだ23にも関わらず、歳だからな、と言い訳をした。
眼下には住み慣れた街が広がっている。
その向こうには、瑠璃色の海。
風に乗って運ばれてくる潮の匂いを、肺いっぱいに吸い込んだ。
足元にはタンポポの花が咲いていた。
空気からも、植物からも、春の訪れを感じた。
首を回して見やった先には。
あの時から通い続けた場所。
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