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「あれ? 珍しくこの時間になっても更新されてないな? 良いとこなのになー」
「どした? 大きな独り言なんて珍しい」
昼休み、会社の食堂で好物のカレーを食べながら携帯を開いていつものように小説の続きを読もうとした。……のだが、続きが更新されていなくて思わず心の声がそのまま口から出てしまったようだ。
「いやね、最近読んでる携帯小説が更新されてなくってよー」
俺は食事中だというのに行儀悪く足を組んで、背もたれに体を預けながら悪態をつく。
「携帯小説か。俺も読んでるよ。当たり外れはあるけど、当たりはホント素人が書いたって信じられないレベルのものもあるよな」
俺は同僚の言葉に頷きながらも、期待していた続きが読めなくて渋々携帯を仕舞った。
こんな気分で午後の仕事とか、最悪だ……いつ更新されるんだろ? まぁ、夜の楽しみに取っておくかな。
そう思ったのに、夜になっても、翌日になっても、この小説が更新されることは無かった。一週間ほど経って、俺のイライラはついに限界まで達する。
「くっそ! いつまで待たせるんだクソ作者め! こんな良いところで放置とかなめてるのか」
「荒れてるなー。お前の言ってる作品って、これの事だろ?」
この一週間で、携帯小説という共通の趣味を持つこの同僚とはよく昼休みに一緒にいるようになった。そんな同僚が俺に向けて携帯の画面を見せる。そこには、まさに俺が更新されるのをずっと焦がれている小説のタイトルがあった。
「見ろよ、作者のプロフィールのページ。お前のように待ちきれない奴らがわんさかと抗議入れてるぜ。人気作品の作家様はつらいなー」
それは俺も毎日のように見ている。作者のページに休載のお知らせとか、そういう類いのものがあればまだ我慢できるが、何も連絡無しに急に更新を辞められると堪ったものじゃない。
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