絶対に読んではいけない小説(Ver.Another)

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 瞬間、食堂の気温がグッと下がったように感じた。不信に感じて小説から目を離して周囲の異変を探る。目の前の同僚は美味しそうにうどんを啜っているし、周りを見渡しても特に気にしている様子な人はいないようだ。  俺だけか? でも、さっきの寒気は確かに本物だった。風邪でも引いたかな?  あんなに楽しみにしていた小説の更新だったけど、俺は午後の仕事に支障をきたすといけないと思い、とりあえず会社の近くの薬局へ向かった。  寒気なら、熱か? 体温計で計ったわけじゃないけど、適当にそれっぽい薬を買って服用する。別に今は寒気を感じていないけど、まぁ大丈夫だろう。それよりも早く会社に戻らないといけない。  そのまま、午後の仕事も何事も無く終えて俺は帰宅した。  昼休憩に読めなかった小説をもう一度開く。さらにもう百ページほど追加されており、作品のタイトルの横には完結の文字が躍っていた。 「マジか! 完結したのか」  思わず声に出た。けど、同僚に独り言を聞かれた時とは違って、俺は一人暮らしだから誰に聞かれることも無い。だから気にせず、栞から読むボタンをクリックして続きを開いた。
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