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ガタンッ!
「うぉわ!」
俺は思わず寝そべっていたベッドから飛び起きた。
簡易な造りのアパートだが、それなりに防音設備は行き届いている。だから普段こんなに大きな音なんてしないから余計に驚いてしまった。
しかし、音がしたのは浴室の方。あんなに大きな音がするものは無かったはずだが?
ガタガタ……ガタンッ!
再び大きな音がしたと思ったら、今度は同時に部屋の電気が消えた。
真っ暗になった自室で、携帯のディスプレイだけが爛々と明かりを灯している。
何の音だろう……? 鍵はちゃんと掛けたし、誰かがいるとは思えない。
でも、暗くなると異様なほど聴覚が研ぎ澄まされるから、俺の血の気は一気に引いた。
ペタ……ペタ……。
何かの足音のようなものが確かに浴室の方から聞こえる。
ペタ……ペタ……ペタ……。
次第にこの部屋に近づいてくる。
湿り気を帯びた足音はより一層の恐怖を引き立てる。
ギィィィ……。
ゆっくりと、部屋の扉が開いた音がした。その正体を探るために、手元で光っている携帯を向けることも出来ず。俺はただただ、動けないでいた。
ナニかが今目の前にいる。
そう、得体の知れないナニかが……。
俺の脳内では、逃げろ! と只管にサイレンが鳴っているが、恐怖から体が全く動かない。
ペタ……ペタ……ペタ……。
ナニかが徐々に俺に近づいてくる。
「ぅ……あぁ……」
声にならない声が俺から漏れた。近づいてきた気配は、ディスプレイの光に照らされてうっすらと輪郭が見え始める。
ヒトの形をしている様に見えるのに、あるはずのパーツが見当たらない。
…………頭が無い。
なんだこれは? どうして、今俺はこんなことになっている? た、助けてくれ!
バチィッ!
音に驚いて目を瞑ってしまったが、目を開けたらいつものように部屋の明かりがついていて、俺の目の前にいたナニかは消えてしまっていた。
しかし、フローリングの所々にある濡れた足跡が、確かにさっきまでそこにナニかがいた事を物語っていた……。
部屋の明かりが灯った代わりに、携帯の画面は省エネ機能によって真っ暗になっている。
昼休憩の時の寒気といい、今の現象といい、おそらく原因はあの小説なのだろう。恐る恐る携帯を手に取り、ディスプレイを開かないまま電源を落とした。
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