97人が本棚に入れています
本棚に追加
『見たらわかるだろう。』
嗚呼何て素敵な響きなのでしょう!
今までの騒動など何ともないと言わんばかりにクールに言い放たれたこの言葉…!
そして微動だにしない小十郎さんの表情筋…!
そこにしびれる憧れるぅ!!
「おーい、飛鳥。」
「かえっておいで~。」
「…はっ!?」
ぺしぺしと頭を叩かれて我にかえる。
初対面の人に性別を間違えられなかったという奇跡的な体験により、自分の世界に入り込んでいたらしい。
「ほら、旦那も困ってるし。」
佐助さんに言われて幸村さんの方を向くと、どこか安心したような顔の幸村さんが手を差し出していた。
殴ったことよりも女であることに握手を拒否していたことをつっこむべきか、対応の早さにつっこむべきか迷ったが、とりあえず手を取った。
「あ、宜しくお願いします。」
「うむ、某、真田幸村と申す!」
宜しくお願いいたす!と笑う幸村さんをみて、何となく元気になれるような気がした。
「…で、バイトはどうするんだ?」
少し間を置いて小十郎さんが口を開いた。
そうだった。
佐助さん達が来たから忘れてたけど、バイトをするかどうかで話し合ってたんだった。
「ああ、そういえばそんな話してたね~。」
ええ、貴方が入ってこなければ多分既に決まっていたことですけどもね、と心の中で毒づきながらどう答えようか考えた。
バイト…小十郎さんの居る職場というのはとても魅力的な響きだ。政宗さんがちょっかいを出してくることを差し引いても良い判断と言えるんじゃないだろうか。
バイトをしない場合…まあ、しばらくは働かないでのんびり田舎のご近所付き合いをするのも中々素敵だと思う。何だかんだ言って早速仲良くなれた人もいるし、好調なスタートだと思う。きっといい生活を過ごせるだろう。
うーん。迷う。
優柔不断だから決められない。
最初のコメントを投稿しよう!