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「…飛鳥。」
もやもやと悩んでいると、小十郎さんが口を開いた。
「は、はい。」
「とりあえず働いてみないか。」
間髪入れず畳み掛けるように小十郎さんは提案した。
…とりあえず?
とりあえずってことは、多分お試し期間みたいなものだろう、と勝手に解釈して、うーんと唸った。
スローライフ
小十郎さんと一緒の職場
憧れの田舎生活
憧れの人と一緒の職場
………。
「じゃあ、」
「飛鳥ちゃん、ちょっと待って。」
とりあえず働いてみます、と言おうとしたところで佐助さんが口を挟んだ。
…一大決心だったのに…。
くそう邪魔しやがってぇえ…と思いつつ佐助さんの方に頭を向けると、当の本人は俺の通帳を持って苦笑していた。
「何ですか?」
首を傾げながら尋ねると、佐助さんは、あーとかうーんとか言っていたけどやがて言いづらそうに口を開いた。
「あのね、飛鳥ちゃん。落ち着いて聞いてね。」
「?はい。」
一体なんだというのだろう。
何となく嫌な予感がして参りました。
「うん、…や、非常に言いづらいんだけど。」
ここまで溜められると心臓に悪い。
皆さん首を傾げて佐助さんの方を見ている。
「…なんです?」
「この通帳ね、」
まさか。
「ここじゃ使えないよ。」
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