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京都鞍馬天狗の首領であ「鞍馬山僧正坊」様の配下である私は、八番弟子に昇格した際の通過儀礼として、十年間東京の名高い霊山、高尾山で過ごす事
になった。
表向きは交流のためという事になっているが、実のところ関東天狗が大きな動乱を起こさぬための監視役である。
人間達の山岳信仰が下火になり徐々に力を失いつつある我々天狗であるが、それでも天狗間の派閥争いというものは一向に治まることは無い。
何せ我々天狗は悉く諍いを好むからである。御山に伝わる信仰を守る護法天狗であろうと、人々を誑かす事を生業とする外道天狗であろうと、それは変わらない。
年に三度赤熱した鉛に殺されることや、人間達に何かを教授せずにはいられないのと同じく、それが我々の定めであるからだ。
私個人としてはこんな汚れ仕事請け負いたくはないのだが、天狗界に良い塩梅の緊張感を保つにこの仕事が不可欠であり、更に出世頭は皆この道を通ると言われれば断ることはできまい。
天狗の社会も厳しいのである。
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