鞍馬山天狗、高尾山天狗の元に参る事。

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「次郎坊(二番弟子)か!何用ぞ!」 「京よりのご来客に御座います。」 「おお、おお、存じておるぞ!となればそこで平伏しておるのが鞍馬の八郎坊殿か!」  余りに畏れ多く、己でも気づかぬうちに身体が平伏の姿勢を取っていたようである。  そのプレッシャーを人間にも解りやすく例えるとするならば、社長を通り越して会長、乃至は理事長に声をかけられているようなものだ。或いは部屋住みの極道が組の大元締めに声をかけられているような。  見かねた広済坊様がお声をかけてくれた。 「八郎坊君、面を上げてくれ。何もそこまで畏まらなくてもいいんだよ。君は鞍馬山の代表として来ているんだから堂々としていなさい。」 「はっ、御意に。」  ようやく面を上げる事は出来たものの、やはり彦三郎様の絵図と目を合わせる気にはなれない。小心者、と笑いたくば笑え。 「よし、入れ!」彦三郎様の絵図が腕を組んで叫ぶ。  促された広済坊様が障子戸を開ける、とまた障子戸。またもや幻術である。これを何度か繰り返して私達は遂に彦三郎様の居室に辿りついた。  揺らめく行灯の光の中、真っ白な羽毛に包まれた彦三郎様 の御体は光り輝いてすら見える。
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