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「俺は、お前のこと絶対に嫌いにならないよ」
「分かってるよ?私も、嫌いになれないんだからね」
そんな、話をしていた。懐かしいと思えど戻りたいわけではなかった。
例えば、それは綺麗な夢。
だから私は寂しさに泣くことはない。無意味に孤独を感じることはない。
例えば、それは厭な夢。
だから私は哀しいと涙している。孤独を恐れて声をあげて叫ぶのだ。
すれ違いは必然で、何もおかしくなどないと分かっていた。分かっていた、つもりだった。
些細なことで喧嘩が増えた、だとか、嫌なところが目に付くだとか。そう、ほんの小さな綻びだったんだ。
もう何度も聞いた携帯電話のコール。寂しげに身体を震わすそれに何故か自分を重ねた。泣いているようだった。それでも、一瞥をくれただけで手に取る気にはなれなかった。
声を、聞きたくなかった。
大好きな人の大好きな声で。でも、手は動かなかった。好きだ、と言って欲しくなかった。
嫌いではないし、好きだ。そうだとて、負担ではあった。好きだと言われる度に重荷を感じた。自身も好きであるが故に重かった。
好きだったが、愛しいとは思えなかった。
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