第7章 新たな一歩へ

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夜とは言え 明々と照らす騎馬隊の 姿を目で確認すると 幸隆は抜いた刀を、 鞘に納めた。 『‥業正殿』 松明に照らされた 先頭の武士を見て 思わず呟いた。 業正は他の者に なにか指示を出すと 数人で斜面を下って 幸隆の前まで馬で歩みよる。 『いつかこの日が、 来ることは予期しておったわっ』 その言葉に返す言葉が 幸隆は見つからない 『一言くらい言えよ、 こないに夜道は危険ぞ』 上泉信綱が続いて口を開いた 『儂は何とも悪くは思わん、 だが、せめて相談くらいは して欲しかったもんよ、 寂しいでは無いかい』 口調を緩めた業正の言葉に 『申し訳もありません。 ちゃんと礼もしたかった… ですが、それが出来る 事では無かった…』 繋ぎ繋ぎに言葉を述べる 『ふっ、気苦労させたな もっと早くに気付いて やれておったら良かった だが儂等は最早、友じゃ! 見送りくらいは、 させてもらおう』 『弾正、これからは 物入りだろう、 これを持って行け』 と業正の言葉に続いた 信綱が木箱を渡す 中には大金が詰め込まれていた 先ほどの言葉と言い この二人の奥底知れぬものに 幸隆の目から一滴の涙が溢れた 『ありがとうございます。 これまで受けた恩は 決して忘れません!』 涙を流しながら 幸隆は二人に頭を下げた 『気にするな、 儂はお前を友と思うておる。 友の旅立ちへの せめてもの餞別じゃ! ほれ、これを』 と業正は一振りの刀を 幸隆に差し出した。 『‥これは青江貞次』 『うむ、我が家に伝わる宝刀よ 前にヌシに見せた事があったな その時、めっぽう気に入って おったろう?これをやる!』 『いえ、頂けません!』 と言う幸隆に 『眠らせておっても仕方無い、 これは志ある勇士が 腰につけてこそ価値ある。 良い持って行け、 そして己の未来を切り開けっ!』 『俺ですら欲しい絶品だぞ、弾正!』 のちに剣聖と呼ばれる 信綱がおどけてそう言い 『もらっておけ! 殿もお前にならやれる。 と前々から言うとった』 その言葉を受けガシッと 刀を掴んだ
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