第2章 海野平合戦

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『晴信殿、此度の勝負は 引き分けで御座るなッ!』 普通の者ならば焦りを出すで あろうが、幸隆は笑みで 晴信にそう言った。 晴信は煮えきらない様子で 『儂を殺さんのかッ! 真田方はこの戦で負けたのだぞ! 儂はその勝者側の軍の者ぞ 何故、殺さぬッ!!』 その問いに幸隆は、 後ろを気にしつつ… 『貴殿はここで死ぬる様な御方では御座らぬ。それに晴信殿を殺しても、戦では負け。変わりは致しませぬ』 幸隆の器の大きさを晴信はこの時 感じた。 『ふん、目障りじゃ、 早う儂の前から消えよ』 幸隆は一礼し 『恩に着まする! また何れ機が御座れば お目に掛かりましょうぞ』 そう言い幸隆は馬を走らせ 無事、敵中突破を成功させた。 晴信は幸隆の男気に触れ 兵に手を出させず幸隆を、 逃さしたのだった。 が… この戦いにより 真田 幸隆は、 領地を失い 上野国に身を寄せる事になる。 後にこの二人は主従関係となり 幸隆は武田 晴信の右腕として その名を全国に響かす事となる。 この時、幸隆 二十九歳 晴信 二十歳であった。
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