館の住人

20/21
前へ
/39ページ
次へ
じいさんと話していると玄関の戸が開いた音がした。 「お邪魔します…。」 俺たちの前に現れたのは、綺麗な顔立ちをした男性だった……。 男の俺でもしばらく見とれてしまった。 「琢磨か…どうした?」 「コレ…今月分…。」 「ありがとう。まぁ、お茶でも飲んでいきな。」 じいさんは琢磨の肩にポンと手をのせ、湯のみを取りに行った。 琢磨は頭を下げると腰を下ろし、俺の方をみた。 「あ…上矢ナオです。昨日は…その…本ありがとうございました…」 「琢磨です…。」 頭を下げるだけで、琢磨はそれ以上何も話さなかった…。 「なんだ、昨日会わなかったのか?」 湯のみを持ってじいさんが戻ってくると琢磨はまた頭を下げるだけで、何も話さない。 「こいつは無口な奴なんだ…。でも、頭はいい。賢く、ものすごく優しい奴なんだ…。」 「はぁ…。北野じぃ…適当なことは言わないでくれ。」 「ハハッ。本当のことだ。」 「あの…琢磨さんは…」 「琢磨でいい…。」 「琢磨は何の仕事してるんだ?」 何となく聞いた質問に琢磨はため息をつく。 「干渉しないって聞かなかった?」 あぁ…聞いたけど…。 コレもだめなのか? そんなに深い意味で聞いたつもりはないんだけどな。 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加