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その言葉を聞いた朝倉は書類を手に取り自信げに言い放った。
「この子の写真見たことありませんか? 」
他の教師は今一、ピンとこない顔をしている。
「実はこの子、元アイドル歌手なんです!!
それが、両親が事故にあって実家に引き取られることになりアイドルを辞めて、今はこの音水市(おとみずし)に引っ越してきたんです。しかもこの子、あまり人目には触れる機会は少なかったんですが両親が音楽をやっていた事もあり、歌唱能力は折り紙つき、ソロではありませんが武道館でのライブもこなした事もあります。」
その朝倉の言葉を聞き、教師も少し悩み始める。
「不幸な元アイドルを助けたとなれば学校の株も上がります。それに彼女の歌は私も聞いた事がありますが、十分ソロでもプロになれる素質があり、家の学校からプロミュージシャンが生まれる事も夢じゃありません。」
と朝倉は強い口調で言い、他の教師も反論の言葉が見つからないでいる。
先ほど反論した教師も納得いかない顔だが反論できない様子でいると
「朝倉先生の言い分は分かりました。推薦枠の件、許可しましょう。」
と教頭が言う。
「ホントですか!?ありがとうございます。」
と朝倉は深々と頭を下げる。
「しかし、これは異例の許可です。生徒からも教師からも納得がいかない者が少なからず出てくるでしょう。それを打ち崩す程の結果と実績を楽しみにしていますよ。」
―――こうして、朱音夏月(あかねなつき)の推薦入学枠は取り付けられた。
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