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「ああ、むしろ正々堂々と、清々しいくらいに、ちえりちゃんの机の上に君臨しておられる」
そして、担任は一番聞きたいことをつぐみに聞いた。
「ちえりちゃんは何をとりに家に帰ったんだい?」
「もー!わかんないです!」
つぐみがブチぎれた。
「予想はつきますけど、それを言いたくないです!」
「つまり…ちえりちゃんは、今朝、ランドセルを家に忘れたのではなく、昨日の夜から、学校にランドセルを忘れてたってことかな?」
「ああああああ…聞こえない…聞こえません、先生…!」
両手で両耳を抑えながら、友人の傍若無人な振る舞いに、頭からは煙、目からは水が出た。
「そうか…でも、羽田さん。ここまで来ると、もうちえりちゃんの長所としてとらえて行くしかないんじゃないかな。例えば、忘れっぽいというより…度を超えた楽観主義者と思ったらどうかな?」
遠い目で、担任は言った。
大きい、担任の背中が大きい。羽田つぐみは初めて教師を尊敬した。
そうか、よく考えたら、一年以上も前から担任はちえりを扱って来たのだ。
きっと自分の知らないところで、いっぱい葛藤があったのだろう。
達観した感じの担任から神々しい光さえ見える。
「とりあえず、自動的に宿題をやってないだろうから、今日は居残りにしようと思う」
「そうしてください。彼女のためにも」
担任は改めて、教育って忍耐力なんだと思った。
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