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「とりあえず、家に取ってきなよ」
ランドセルを早く取りに家に帰った方がいいだの、先生に言ってからがいいだの、母親に持ってきてもらったほうがいいだのと、論じながら、やいのやいのと校門までみんなで来た。
通学班の班員たちが解散すると、つぐみはちえりに、家に取って来いといったのだ。
「あ、ママにおこられるぅ!」
現実に引き戻されたかのようにちえりの顔が青ざめた。
彼女の天敵は他ならぬ母親なのだろうか。
「いいから、早く取りにいきなよ」
つぐみはそういって、ちえりの背中を押した。
ちえりは、まっすぐに歩かずに、鼻歌をしながら、独特のステップを踏みながら、家路につく。
彼女は表情がくるくるとよく変わる。
カレイドスコープさながらと言ったところか。
たぶん、今、ダンススタジオで練習しているダンスのステップなんだろう。
「こらーちゃんと歩けー!早く戻って来なよ~!」
後ろでつぐみの声がした。
帰路、気がつくと登校する児童は、辺りにいなくなっていた。
早くランドセルを取りに行かねば、と、さすがに思って欲しいものだ。
そこへ、逆方向から、すごい駆け足で中学生のお姉さんが通り過ぎる。
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