01話「ちえり編」02(中に人はいまてん)

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「とりあえず、家に取ってきなよ」 ランドセルを早く取りに家に帰った方がいいだの、先生に言ってからがいいだの、母親に持ってきてもらったほうがいいだのと、論じながら、やいのやいのと校門までみんなで来た。 通学班の班員たちが解散すると、つぐみはちえりに、家に取って来いといったのだ。 「あ、ママにおこられるぅ!」 現実に引き戻されたかのようにちえりの顔が青ざめた。 彼女の天敵は他ならぬ母親なのだろうか。 「いいから、早く取りにいきなよ」 つぐみはそういって、ちえりの背中を押した。 ちえりは、まっすぐに歩かずに、鼻歌をしながら、独特のステップを踏みながら、家路につく。 彼女は表情がくるくるとよく変わる。 カレイドスコープさながらと言ったところか。 たぶん、今、ダンススタジオで練習しているダンスのステップなんだろう。 「こらーちゃんと歩けー!早く戻って来なよ~!」 後ろでつぐみの声がした。 帰路、気がつくと登校する児童は、辺りにいなくなっていた。 早くランドセルを取りに行かねば、と、さすがに思って欲しいものだ。 そこへ、逆方向から、すごい駆け足で中学生のお姉さんが通り過ぎる。
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