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ぬいぐるみがしゃべりだすや否や、立ち上がり、ちえりに向かって指をさす。
「【パステルガァル!】になって、世界の【色】を救ってくだたい!」
ちょっとイラッとするような語尾で、ぬいぐるみはちえりに、唐突にそういったのだ。
「うん!いいよ!」
ちえりは間髪入れず快諾した。まさに電光石火の反応である。打てば響くとはまさにこのことだ。
「え? ちょっと、はや!? 驚くとか、考えるとか、しないんれすか!?」
逆にぬいぐるみの方が反応に戸惑ったようだ。
「わかんない!」
ちえりは笑顔で答えた。
「いや、そもそも、ぬいぐみがしゃべってるのれすよ。そこまずは、突っ込まなきゃいけないと思うのれす。それで、【パステルガァル!】は結構過酷なのれすよ。敵が現れたら、眠くても戦いに行かなければなりまてんよ」
「これ、なんでしゃべってんの?」
ちえりはそういうと、白いぬいぐるみを足から掴んで宙ぶらりんにした。
「あ。ちょっとなんてことを!」
いきなり持ち上げられ、あわあわする、しゃべるぬいぐるみ。
「これチャックないね?」
ぬいぐるみの背中のわさわさとまさぐる、ちえり。
「うひょひょ!くすぐったいのれす!背中にチャックはありまてん!中に人はいまてん!つか、中に人が入っていたら、小さすぎれす!」
大きさはちえりの頭ほどだから、確かに中に入っているとしたら小人だ。
「ボクは【ぱれっと】といいまつ! 【パステルワールド】の使者なのれす!」
と、これからさばかれる鶏みたいな両脚宙吊り状態で、必死に、涙目で、【ぱれっと】は自己紹介した。
あまりにも惨めな、自己紹介だった。
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