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「ぐっ」
「っ……」
色気も何もあったもんじゃない私の悲鳴と、
「だ、大丈夫?ですか?」
私の下敷きになって、落下のダメージを緩和してくれた青年の無言の悲鳴。
「俺は大丈夫……君は?」
私は彼の上から素早く降りると、彼は本当に何んともなさそうに立ち上がり衣服に付いた土を払った。
「私も平気です。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、命の恩人?をみる。
それほど短くはない程度のサラサラの金髪、きれいな宝石みたいな碧眼、服装は何だか民族的な感じで腰に腹巻じゃないけど分厚い布を巻きつけて、紐で括っていた。
男性に言う言葉じゃないけど、正直美人。釣り上った眼はしかし優しげに私を見下ろす。
私は少し顔が赤くなるのを感じる。
だって!
こんなイケメンに見つめられることなんてないんだもん!!
彼を直視できずに視線を少し下に降ろすと、先ほどの鳥がいまだに彼の後ろで蠢(うごめ)いていた。
そして、チャンスとばかりに彼の背中にとびかかる。
「あ!」
危ない、という私の言葉は遅く、それよりも速く彼は動いていて背中に収めている剣を抜きとると鳥を真っ二つにした。
地面に転がった鳥だったものは黒く変色して消えた。
消えた?……死んだの?
生き物が消えるなんてありえない。
それともこの世界では当たり前のことなのだろうか。
鳥が消えたあたりの地面に矢が一本刺さっている。
「矢?」
「ああ、それ俺の矢。それで射たのはいいんだけど君が落ちてくるの想定範囲に入れてなかったんだ……」
……………この人、強いのかもしれないけど、イケメンだけど、抜けてる……。
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