女中と私

14/14
1161人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
 ̄ 「あーぁ。」 原田のため息混じりの落胆の声は、斎藤にはもう届かない。 灰となり塵と化している斎藤は、一息かければ飛ばされるだろう。 原田がどうしたものかと、首を捻っていると、どたどたと粗い足音共に、平隊士が台所にひょっこり顔を出した。 「あー!隊長やっと見つけました!!今日の稽古、原田隊長と斎藤隊長が師範で‥す‥‥よ?」 まぁ。なんと、不運な平隊士なのだろうか。 今、台所には二匹の死体と、苦笑いの沖田、原田そして永倉。 こんな、混沌とした場に出くわすとは。 斎藤はといえば、きっと稽古に出れないだろう。煽った沖田も少なからず悪い。 沖田は原田からの睨みにため息を溢した。 「今日は一君は、体調が悪いから俺が出向くよ。いいね?」 平隊士は、げっ!と言葉を飲み込んだ自分を素晴らしく褒め称えた。 「わかりました。(命の覚悟をするように)みんなに伝えてきます。あ!あと、永倉隊長、山南副長が呼んでました。それでは、失礼しました。」 この現状に、後ろ髪を引かれつつも、自分の身可愛さに平隊士はまた戻っていった。 原田は倒れている雨音に近寄ると、すっと抱き上げる。 「ということで、嬢ちゃん。おじさん達、働きにいってきますよぅ?」 このまま行くのは、なんとも心が痛む。 雨音は覗きこんでくる原田から、ぷいっと顔をそらした。 「そうですか。ぶす猫は洗い物します。」 ぴっしゃぁぁん!と、雷が落ちた。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!