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「あーぁ。」
原田のため息混じりの落胆の声は、斎藤にはもう届かない。
灰となり塵と化している斎藤は、一息かければ飛ばされるだろう。
原田がどうしたものかと、首を捻っていると、どたどたと粗い足音共に、平隊士が台所にひょっこり顔を出した。
「あー!隊長やっと見つけました!!今日の稽古、原田隊長と斎藤隊長が師範で‥す‥‥よ?」
まぁ。なんと、不運な平隊士なのだろうか。
今、台所には二匹の死体と、苦笑いの沖田、原田そして永倉。
こんな、混沌とした場に出くわすとは。
斎藤はといえば、きっと稽古に出れないだろう。煽った沖田も少なからず悪い。
沖田は原田からの睨みにため息を溢した。
「今日は一君は、体調が悪いから俺が出向くよ。いいね?」
平隊士は、げっ!と言葉を飲み込んだ自分を素晴らしく褒め称えた。
「わかりました。(命の覚悟をするように)みんなに伝えてきます。あ!あと、永倉隊長、山南副長が呼んでました。それでは、失礼しました。」
この現状に、後ろ髪を引かれつつも、自分の身可愛さに平隊士はまた戻っていった。
原田は倒れている雨音に近寄ると、すっと抱き上げる。
「ということで、嬢ちゃん。おじさん達、働きにいってきますよぅ?」
このまま行くのは、なんとも心が痛む。
雨音は覗きこんでくる原田から、ぷいっと顔をそらした。
「そうですか。ぶす猫は洗い物します。」
ぴっしゃぁぁん!と、雷が落ちた。
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