始まりと私

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 ̄ 町は、シトシトと雨が降っていた。 雨音は、お気に入りのオレンジ色の傘を差し、家を出た。 今日はサークルの集まりなのだが、生憎の雨で行くのがダルく感じる。 お気に入りのスニーカーで歩く度に、雨はパシャパシャと跳ねる。 土のようなよくわからない、雨の匂いが雨音の鼻をくすぐった。 歩きで来るんじゃなかった。 小さな後悔が、雨音の足取りを重くした。 その時、雨音の携帯がなった。 「はい?。」 「雨音?あたしあたし!」 耳がキーンとなりそうな位の、ハイテンションな声が響く。 今度はあたしあたし詐欺が、流行ってるのですか?。 犯人はわかっているが、一応問いかける。 「だれですか?」 「ガビーン。愛する友人の名前も忘れちゃったわけ?」 ガビーンって普通口で言うか?。 ガビーンって。 「ごめんごめん。どうしたの?絢子。」 「雨音が遅いから電話かけてあげたの!!。」 偉いでしょ? と絢子は付け足した。 絢子とはこの春、大学で知り合った。 ちなみにサークルも一緒で、その高いテンションはサークル内を明るくする。 「暇だねぇ。」 「えぇ。ひどいよう。」 電話の向こうからは、泣き真似と、ブーブーと抗議の声が聞こえてくる。 「で、本当の用件はなんなのさ。」 いまだになにか言ってるが、気にしないでおく。 いつものことだ。 「暇だったから。」 文字に表したら、ハートマークがついてくるだろう声が、雨音をイラつかせる。 いつものことだ 「電話切きるよ?」 可愛く語尾に、星なんかつけてみたりする。 イメージ内ではだが。 言葉とは裏腹に、携帯を握る手に力が入る。 「いやぁん。怒らないで雨音様。絢子は怒られるのキ・ラ・イ。」 うふっと、電話の向こうでは可愛らしく笑う声が聞こえた。 携帯がミシリと音を立てた。
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