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「なんであたしが、幕末に?つか、声おっきい‥‥。」
雨音は、携帯を耳から放した。
携帯を放したのにも関わらず、絢子の声は耳まで届く。
「わかんないけど、いたんだもん。近藤さん達。新撰組と一緒にいたんだもん。スッゴいリアルだったんだから。それであたしは!!‥っ‥なんでもないっ。」
そう言われてしまうと、気になってしまうものだ。
雨音は、絢子に聞き返す。
「あたしは?」
「いいわよ。気にしないで。」
「気になるじゃん。言ってよ。」
「‥あ‥‥。あたしは、ふ、不安になったのよ!!なによ、悪い!?」
若干ツンデレ気味な絢子に、雨音は吹き出す。
「悪くない、悪くない。あたしが幕末にねぇ。で不安になっちゃったんだ。」
うるさい!
と、電話の相手から罵られる。
そう言われても、こんな面白いことはない。
「まぁ、絢子ちゃんが新撰組に、熱をあげてるからね。きっと、そのせいじゃない?絢子ちゃんがじゃなくて、あたしが一緒にいるあたりがミソね。」
雨音は、くすくすと笑った。
電話の向こうでは、言わなきゃよかったと呟きが聞こえる。
「雨音だって、新撰組が好きなくせに。」
「当たり前でしょう。何のために、この【新撰組サークル】に入ったと思ってんのよ。」
【新撰組サークル】
それはとある大学の、隅の方で活動しているサークルだ。
その活動内容は、新撰組について熱く語ろうではないか!である。
そのため部員達は本当に、思い思いに自分の好きな偉人達を語りあい、頷きあう。
ちなみに絢子は、近藤さん派。
雨音はというと、誰とは言わないが幕末という、その雰囲気が好きなのだ。
今日向かうのも、そのためのものであり、さっきからこの状態だ。
「じゃあ。あとでその話詳しく聞かせて?。今から電車に乗るから。」
目の前の交差点をわたると、もう駅である。
「うん。わかった。」
雨音にそう言うと、絢子はあっさりと切った。
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