始まりと私

4/5
1161人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
 ̄ 「なんであたしが、幕末に?つか、声おっきい‥‥。」 雨音は、携帯を耳から放した。 携帯を放したのにも関わらず、絢子の声は耳まで届く。 「わかんないけど、いたんだもん。近藤さん達。新撰組と一緒にいたんだもん。スッゴいリアルだったんだから。それであたしは!!‥っ‥なんでもないっ。」 そう言われてしまうと、気になってしまうものだ。 雨音は、絢子に聞き返す。 「あたしは?」 「いいわよ。気にしないで。」 「気になるじゃん。言ってよ。」 「‥あ‥‥。あたしは、ふ、不安になったのよ!!なによ、悪い!?」 若干ツンデレ気味な絢子に、雨音は吹き出す。 「悪くない、悪くない。あたしが幕末にねぇ。で不安になっちゃったんだ。」 うるさい! と、電話の相手から罵られる。 そう言われても、こんな面白いことはない。 「まぁ、絢子ちゃんが新撰組に、熱をあげてるからね。きっと、そのせいじゃない?絢子ちゃんがじゃなくて、あたしが一緒にいるあたりがミソね。」 雨音は、くすくすと笑った。 電話の向こうでは、言わなきゃよかったと呟きが聞こえる。 「雨音だって、新撰組が好きなくせに。」 「当たり前でしょう。何のために、この【新撰組サークル】に入ったと思ってんのよ。」 【新撰組サークル】 それはとある大学の、隅の方で活動しているサークルだ。 その活動内容は、新撰組について熱く語ろうではないか!である。 そのため部員達は本当に、思い思いに自分の好きな偉人達を語りあい、頷きあう。 ちなみに絢子は、近藤さん派。 雨音はというと、誰とは言わないが幕末という、その雰囲気が好きなのだ。 今日向かうのも、そのためのものであり、さっきからこの状態だ。 「じゃあ。あとでその話詳しく聞かせて?。今から電車に乗るから。」 目の前の交差点をわたると、もう駅である。 「うん。わかった。」 雨音にそう言うと、絢子はあっさりと切った。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!