誰?

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(――あ、) 身の危険を感じたときには、もう遅かった。 がり、と嫌な音がしたかと思うと、頭の中がぐずぐずに溶けているような、それでいて首を中心に、身体の内側が熱くなるような、そんな感覚。 ふわふわする。熱い。気持ちいい?気持ち悪い?分からない。分から、ない。 怖い。 これは分かった。 これだけは分かった。 自分が自分じゃなくなる、感覚。 「ひ、ィっ……!」 離してほしい。やめてほしい。 なのに、わたしは、ただ彼の背中にすがり付く事しかできなかった。 情けない。 ……もう、どのくらいの時間が経っただろうか、ようやく熱が離れた。 長かった気もするし早かった気もするが、体力が限界に近いことには代わりがない。 ただでさえ、体力には自信がないのに。 「はァっ……!」 「……ま、こんなもんか」 「何をッ……」 「あ?この期に及んでまだわかんねえか?」 彼は、赤い血を舐めとりながら、そう言った。 まごうごとなく、わたしの血だった。 「お前らが『吸血鬼』って呼ぶ存在だ」 「―――――」 「もう寝ろ。起きた頃には全部終わってるからよ」 優しい声だった。 不思議なことに、彼の目を見れば、先程まで不安定だった気持ちが落ち着いていった。 そうしてそのまま、わたしは意識を手放したのだった。 →
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