楽にしてください

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わたし、春日きりえは大変居心地が悪かった。 なぜか。 それは、不機嫌なオーラをちっとも隠さない、目の前の美人に原因がある。 「……あのですね」 「あ?」 「とりあえず、挨拶、しましょうか」 「何で」 「何でって……名前知らないからなんて呼べば良いのか……。あ、わたしは春日きりえっていいます」 「きりえ、ねぇ」 美人さんはまるで値踏みをするような目付きでわたしを見据えた。 畜生、腹が立つけど様になってる。けど腹立つ。 「いけ好かねえ名前だな」 「え」 「俺はレオルカだ」 「……レオルカ、さん」 「おう」 そう言って美人さん――もといレオルカさんは、大して興味なさげに用意してあったぽた●た焼き(わたしこれ好きなんだよね)を手に取った。 今世紀最高峰の(ただし、わたしの推測である)美人の手に、ぽた●た焼き。決してぽた●た焼きを愚弄しているわけではないが、見事にアンバランスだ。 堪えろ、わたし。吹き出すな! 吹き出した瞬間ミイラになると思え! 「……で、レオルカさんは、」 「あんだよ」 「吸血鬼、なんですよね?」 「おう。まだ信じらんねえってんならもう一回吸うぜ?」 「結構です」 舌打ちするレオルカさんを他所に、わたしはバレないよう溜め息を吐いた。 随分と現実離れしたことが起きたものだ。 異世界トリップ。空想の世界の出来事だと思っていたが、どうやら考えを改めた方がいいらしい。 →
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