透明な死神

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 月の出ていない夜。人通りの多い街の中。僕は漆黒のローブを羽織り、自らの体よりも大きな鎌を持ってどこへともなく歩く。  星の数ほどいるのかという思えるほどの人がいるが、僕は誰にぶつからずゆったりと動く。  人が僕を避けているのだ。腫れ物を避ける、といったようなものではない。無意識に避けているの。  その証拠に誰の目も僕には向けられていない。銃刀法に違反してそうな大鎌を持っているが警察にも呼び止められない。  僕はただふらふらと人の波を漂う。それだけで目的の場所に着ける。  そうやって着いた場所は公園だった。虫たちが無闇に電灯に近づき燃える音が聞こえる。  公園には犬の散歩中のおばさんや、イチャついているカップルなんかがいた。  今日、僕の目についた人間はイチャついていない男女だった。  周りの爽やかな雰囲気に反し、そこだけ暗いオーラが発されている。  僕はその男女の前に移動する。2人共気付かない。  ごめんね、一言言うと女は立ち去った。  男は下を向いて呟いた。終わったな、と。 「ああ、終わりだ」  僕が告げると男はいきなりのことに驚き顔を上げる。 「君は誰だ?」 「死神だ。お前に死と新たな生を届けにきた」  針のような鋭さを持って言い放つ。 「そうか、ちょうど良い。俺は死にたい気分だったんだ」  男は大鎌を見ながら言った。 「当たり前だ。僕はそういう人間にしか見えない。そういう人間しか殺さない。名を名乗れ。お前は僕の中で新たな生を受ける」 「そうか」  男はまた呟いた。そして、告げる自らの名を。 「水面、神崎水面だ」 「神崎水面。承知した。」  鎌を振り上げ、振り下ろす。さよならと呟きながら。  公園には悲鳴が木霊している。  何が起きたか誰も分からない。  人の首がいきなり飛んだのに。  公園の出口、僕は振り向かない。
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