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元就の姿は厳島神社の境内にあった
元親は『ついてくるな』と言われた為に物陰に隠れる
大きな体を屈めて隠れながら自分の行動に疑問を感じていた
「(俺は何で隠れてるの?…毛利の兵じゃないのに。まぁ、いいか)」
元就の居場所は、本人の後をつけられるはずもなく毛利の家臣に聞いた
初めは元就が恐ろしいのか拒否したが、国主の誇り皆無で懇願すると小声で教えてくれた
教えてくれた家臣の瞳が憐れみに満ち溢れた様に見えたのは気のせいであろう
「(それにしても…何すんだ?太陽も出てないのに)」
元就は太陽…日輪を拝むことを習慣としている
雨天では当然のことながら日輪は見れない
纏う着物は室内で来ていた鶯色の着流しではなく、祭祀の時の白い衣装であった
「(雨乞い…?いや、晴れ乞いか?)」
元親が見ている事を知らない元就は、さしていた傘を近くにいる神官装束の男に渡す
傘を受け取った男が下がり、かわりに巫女装束の娘が木箱を差し出した
元就はその箱からある物を取り出す
それは、シャンッと涼やかな音を響かせた
「(確か…神楽鈴だよな)」
元親は黒歴史である姫若子時代に読んだ書物の知識を紐解いた
用が済んだのか、境内から神官と巫女が元就に一礼して去っていく
境内には元就(と隠れている元親)だけが残されたのだった
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