昔、昔のお話

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あの時…吉継は確かな死を選ぼうとした それを俺は無理に止めた あいつの死をあるがままに受けることなんて出来なくて… 忍びを放った 小早川の意識が他に向かうように 関ヶ原の勝敗なんてどうでも良くなった 利のある方につき… 勝たせるための策を幾つも考えた それなのに…完全勝利に必要不可欠である 『小早川隊の裏切り』 『大谷隊を崩壊させる』 その二つを俺自身が駄目にした あいつの…武士としての華々しい散り際の舞台をなくした 最低だが…あの時の俺には最優先事項 …吉継が生きていることだけが重要だった 「…君を今更恨むつもりはないよ。あの時…君が来た時に死を選ぶということを忘れた自分がいたのだから」 「…忘れていた?どういう意味だよ。吉継。あんたは確かに死のうとしていただろ」 「ああ。だが…君が来た時…分かった気がする。私は…確かに君のことを待っていた…」 「…吉継。お前…何考えてんだ?」 「…ふふっ。何でもないよ。高虎。君と逢えて良かったと思っただけだ。さて、折角の君のお誘いだ。共に花見に行ってくれるか?」 その時の吉継の笑顔は忘れられない 普段の穏やかな微笑みも…勿論良いんだけど あの時…本当の意味での笑顔っていうものを見た気がした… 桜なんかよりも…綺麗で…甘く薫る笑顔っていうのはああいうのを言うんだろうな
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