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――目の前には一つ目の巨人。
――その手には巨大な戦斧。
――そして、ここには。
――死にかけの俺。
「う……ぐッ! が……ッ! がはッ……ごほッ!」
血反吐を出しながら思った。
戦斧による一撃を受け、生きていることを幸運だと思うべきか?
いや、死ぬのが僅かに延びただけなら、幸運だとは思えない。肢体を引き千切られるような痛みを味わう為だけに、死ぬのが延びたならどう考えても不運だ。
巨人が近づいて来る。
止めを刺す気か。
逃げなければ。そう思い、痛みを堪え必死に立ち上がるが、身体を支えるのが精一杯だった。
今度こそ終わりだ。
死を覚悟する。
その時、唐突に、何処からか声が聞こえた。
その声が外からではなく、自身の中から響くものだと、何故か理解していた。
どこまでも澄み透る。
鈴の音のような。
美しい声だった。
俺は、ただ、その声に導かれるままに。
『――ル――』
『――ビ――』
『――ス――』
その名を喚んだ。
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