1限目:おばけ の おうち

3/20
前へ
/20ページ
次へ
――数時間前―― 「―――以上で学費についての説明を終わります。ご質問のある方は――」 「ふわぁ・・・。」 だだっ広い体育館の中、大きなあくびをした後、俺は目をこすりながら、一生懸命学校案内をしている若い、新任らしき教師を見た。 (早く終わんないかなぁ・・・) 新任(?)教師は保護者のおばさまに何やら質問され、てんやわんやしている。 可哀想に。おおかた先輩教師に押し付けられて、断れなかったんだろうな。ご愁傷さま・・・。 俺は柳 晴彦。どこにでもいる普通で平凡なピカピカの高校一年生だ。 今日は俺がこれから三年間通うことになる、ここ冥京高校の学校説明会に来ている。 本来ならこういったものは保護者が来るのが普通なのだが、色々と事情があり俺は自分で聞きに来ている。 といっても、聞きたいのは「あのこと」についての説明だけなのだが・・・。 「どうしたの、はるくん?先生をそんな哀れな捨て犬を見るような目で見て。」 俺が教師を寝ぼけ眼で見ていると、隣から金髪サラサラヘアーをなびかせた少年が小声で話しかけてきた。 「捨て犬を舐めるな。あいつらが人間の食糧を狙うときのチームワークは常軌を逸してる。」 「僕は犬と食糧の争奪をしたことがないからその感覚はわかんないけど・・・。」 この金髪は杉内 咲矢。俺の幼なじみで、大企業の社長の一人息子で超お坊ちゃま。だが今はとある事情により無一文である。 どうみても小学生にしか見えないが、れっきとした高校生。 こいつも今年から冥京高校に通うのだが、同じく諸事情により説明会に参加している。 「犬との戦闘経験が無いなんて、咲矢はどこまで温室育ちなんだ。それでよく16歳まで生きてこれたな。」 「多分ほとんどの人はそんな経験をせずに一生を終えると思うけど・・・。」 「黙れ成金ヅラ小僧。貴様に一般市民の何がわかる。」 「ひどい・・・。僕はヅラでも小僧でもないのに・・・。」 成金を否定しろ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加