1限目:おばけ の おうち

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「そういえば、望はどこにいるんだ?一緒じゃないのか?」 俺が聞くと、咲矢は困ったように言った。 「それが、途中までは一緒だったんだけど・・・。」 「まさか、また・・・。」 「うん・・・。途中で見かけたラーメン屋さんで『替え玉10杯完食で一年間ラーメンタダ券進呈!』ていうのがやってて、気付いたら店の中に・・・。」 やっぱりか・・・。 「『あたしに構わず先に行けー!』って・・・。遅れそうだったから、一人で来ちゃったんだけど・・・。」 「賢明な判断だ。あいつなら完食直後にタダ券を使って、店の食材を食い荒らすに違いない。下手したら一日中入り浸りかねん。」 「だよね・・・。」 「ああ。でも望のことだから、多分今頃は・・・」 「うわあぁーん!!」 その時、説明会をしている部屋の外から、女の子のものと思しき激しい泣き(叫び?)声が聞こえた。 「出禁って何なのよー!一年間タダって言ったのにー!おじちゃんの嘘つきー!」 俺と咲矢は顔を見合わせ、同時にため息をついた。 「「やっぱり・・・。」」 今外で騒音公害を撒き散らしている少女は由々谷 望といって、俺と咲矢の幼なじみだ。 彼女は大食いチャンピオンでも引くほどの大食漢(?)で、「大食い挑戦者求む!」と書かれている看板を見たら店に入らずにはいられない(らしい)。 そして大抵はノルマ分を軽々と平らげ、その後「食べ足りない」と言ってただの食料荒らしと化し、今のように店側から出禁を食らう。 今日は咲矢と一緒に説明会に来る予定だったのだが・・・。 「咲矢ー!晴彦ぉー!どこぉー!?」 まだ泣いている。というか迷子になっている。その上俺の名前を呼んでやがる。 あいつ道わかんなかったのか・・・。 「はるくん・・・。」 「わかってる。このままじゃこっ恥ずかしい上にいつか警察を呼ばれかねん。行くぞ。」 俺達は説明をしていた教師に断って、保護者の方々からの白い目線を目一杯浴びながら体育館を出た。
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