手活けの花

10/13
前へ
/73ページ
次へ
女の元雇い主、男の2番目の愛人と客の話を思い出す。 「ママは※手池の魚だからな」 「まぁ、失礼ね。※2手活けの花にして頂戴」 オホホホ、と気取って笑うママに客の男は更に言う。 「心配じゃないのかな、ママみたいな綺麗な女の人に男相手の商売をさせて」 ママは笑いながら客に言った。 「男の人は何人女がいてもまだ欲しいのよ。貪欲なのよ。だから私のことをものにしたらもう釣った魚に餌はやらないのよ。それが私の男よ」 雇い主の女は客に水割りを差し出す。 客の男はふーん、そんなもんかねぇ、と笑う。 自分も同じなのだ。 手ずから餌をやる魚。 自ら活けた花。 男はそうやって自分の池を増やし、魚を養う。 自分で花を活ける。 まだ欲しいの? 女は心で泣いた。 ※手池の魚(テイケノウオ) 自分の手で魚を養うの意味から、妻や妾の意。 ※2手活けの花(テイケノハナ) 手池の魚と同様。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

453人が本棚に入れています
本棚に追加